抗原検査について、今後のために詳しく知っておきたいです。
検査の意味や、検査の流れ、注意点について教えてください。
この疑問に答えていきます。
新型コロナウイルスのデルタ株などが流行していたときに、抗原検査も最も流行っていた検査方法です。
現在では、PCR検査が主流となってきていますが、まだまだ抗原検査で新型コロナウイルスのチェックを行っている医療機関も少なくありません。
本記事では、読めば抗原検査のすべてを理解できるように解説していきます。
抗原検査とは
そもそも、抗原検査とはどのような検査なのかおさらいしましょう。
抗原検査は、ウイルスが持つ特徴的な抗原(タンパク質)を検出し、陽性・陰性の判定を行う検査のことです。
症状があれば、短時間かつ正確に検査ができるため一次スクリーニング検査として広く普及しています。
筆者の職場で行われている一次スクリーニング検査の例
- 県外へ外出後に検査
- 出張時の院内への感染源持ち込み防止のために検査
- 体調不良時の検査
- 濃厚接触者疑惑が出た時の検査
以前は抗原検査で行っていましたが、現在はPCR検査でスクリーニング検査を実施しています。
抗原検査の正式名称は「抗原定性検査」あるいは「抗原定量検査」と言います。
この項目では以下の順で解説します。
- 抗原定性検査とは
- 抗原定量検査とは
- 抗原検査の検査方法・種類
- 抗原検査とPCR検査のちがい
①抗原定性検査
スワブなどにより採取した検体を専用の試薬に混ぜ、抗原検査キットに滴下して判定する検査方法のことを指します。
市販されている抗原検査キットは抗原定性検査を行っています。
抗原定性検査では、陽性または陰性の2パターンの判定のみ行います。
新型コロナウイルスだけでなく、インフルエンザウイルスの検査も抗原定性検査で行われています。
- 専用の検査機器が必要ない
- 15分~30分の短時間で判定
- 無症状には適さない
無症状の場合、ウイルス量が少なく検出できない可能性もあるため、抗原定性検査は適していません。
無症状の場合はPCR検査が適しているため、医療機関を受診することをオススメします。
②抗原定量検査
抗原定量検査は、専用の機器を用いて検体の中に抗原がどの程度含まれているかを調べる検査方法です。
設定された基準値を超えると陽性、超えなければ陰性という判定が出されます。
抗原定性検査と違い、基準値を決めることで数値による具体的な判定が可能となるため、高い検査精度が確保されます。
- 専用の機器が必要
- 30分前後で判定
- あまり普及していない
抗原定量検査に使われる検査機器は、そのほかの感染症の検査にも使われます。
高い精度が期待されますが、円滑な検査が行えず同等の精度であればPCR検査でも良いことから、現在はほとんど行われていません。
③抗原検査の検査方法・種類
抗原検査には、主に2種類の検査方法があります。
- 唾液による検査
- 咽頭・鼻咽頭ぬぐい液による検査
唾液での検査
市販の抗原検査キットではよく見られる唾液での検査方法ですが、操作がとても簡単に行えます。
付属のスポイトなどで唾液を採取し、検査キットに滴下するだけです。
簡単な検査ではありますが、いくつか注意が必要です。
- 唾液採取前(30分程度)は口をすすがない
- 同様に飲み物を飲まない
口の中のウイルスが流れてしまいますので、正確な検査が行えません。
咽頭・鼻咽頭ぬぐい液による検査
唾液よりも咽頭・鼻咽頭ぬぐい液による検査の方が精度が高いと言われています。
理由としては、唾液の場合ウイルス量が不足している可能性があるからです。
飲み物を飲む、口をすすぐなどしたことを忘れている場合は、唾液による抗原検査は無効となってしまいます。
一方で、咽頭や鼻咽頭についてはウイルスが流れてしまう可能性が少なく、症状がある場合は一般的に精度が高いと言われています。
精度が高い検査方法ではありますが、いくつか注意が必要です。
- スワブを鼻に突っ込むため、痛みがある
- 検査者の手技の差による
- 検査時の反射(咳やくしゃみなど)により曝露のリスクがある
- 子どもはとても嫌がる
検査の際、スワブと言われる綿棒のようなものを鼻の奥に差し込む必要があるため、嫌な痛みが生じます。
市販の抗原検査キットは、自分自身で検査を行う場合、躊躇してしまうなど正確な検査ができない場合があります。
そのため、家族や同居人などに行ってもらうことをオススメします。
医療機関で検査を受けると、看護師や医師により容赦なく突っ込まれますので検査の精度は確保されます。
あまりリスクとして認識されていませんが、被検者以外によるスワブの操作は、検査時に咳やくしゃみなどが起こると曝露してしまう可能性があります。
特に小学生以下の子どもはこの検査を嫌がるので、検査者は感染対策を行って検査する必要があります。
④抗原検査とPCR検査のちがい
抗原検査はウイルスのタンパク質を検査しているのに対して、PCR検査はウイルスの遺伝子を検査しています。
以下、抗原検査とPCR検査のちがいを表にまとめました。
抗原検査 | PCR検査 | |
---|---|---|
検査目的 | 現在の感染 | 現在の感染 |
検査の適応 | 有症状のみ | 無症状・有症状 |
検体採取方法 | 唾液、鼻咽頭ぬぐい液 | 唾液、鼻咽頭ぬぐい液 |
検査するもの | ウイルスのタンパク質 | ウイルスの遺伝子 |
検査の精度 | 有症状なら高い | 無症状・有症状どちらでも高い |
専用機器の必要性 | なし (抗原定量検査では必要) | あり |
判定時間 | 15分~30分 | 数時間~数日 |
結果確認場所 | 検査場所 | 郵送やメールでの通知 |
そのほか、抗原検査の中でも抗原定性検査は、日本から入国/出国する際の検査証明書の取得が認められていません。
PCR検査であれば検査証明書を取得することができます。
抗原検査の精度
抗原検査の精度、気になりますよね。
一番注意しておかなければいけないことは、無症状の人からの検出は難しい・不適切ということです。
感染していても無症状の場合、ウイルスがほとんど増殖していないと考えられています。
抗原検査で検出するためには一定以上のウイルス量が必要となってくるため、有症状の人が検査の適応となります。
無症状の場合はPCR検査が最も適しています。
抗原検査の精度は、抗原検査を行う検査キットの種類によりますが、多くは95%以上と言われています。
発症後2日目~9日目の有症状者については、抗原検査とPCR検査の精度はほぼ同等ということが厚生労働省より発表されています。
抗原検査キットの研究用と医療用
抗原検査キットには、薬事承認を受けたものと、そうではないものがあります。
薬事承認を受けた抗原検査キットは、医療用抗原検査キットと呼ばれ、厚生労働省・消費者庁より使用を推奨されています。
一方で、薬事承認を受けていない抗原検査キットの多くは「研究用」抗原検査キットとしてドラッグストアやスーパーの一画で見かけることがあります。
なぜ研究用と医療用があるのかについてそれぞれ説明します。
【研究用】抗原検査キット
「研究用」と記載のある抗原検査キットは薬事承認を受けておらず、検査キットの検査性能が”国により”認められていません。
研究用抗原検査キットの最大の特徴は、ドラッグストアやインターネットで販売されていることです。
また、検査の目的が若干違います。
医療機関の抗原検査キット
ウイルスに”感染しているかどうか”を判定すること。
研究用の抗原検査キット
ウイルスが”いるのかいないのか”を見ている。
ウイルスに感染しているかどうかを判定すると「診断」となります。
これをすり抜けるために「ウイルスの存在の有無」を判定しているだけにすぎないのです。
そのため、研究用の抗原検査キットでいくら陽性反応が出ようとも「確定診断」とはなりません。
また、陰性証明書の発行も行うことはできません。
【医療用】抗原検査キット
研究用と違い、薬事承認を受けている抗原検査キットを「医療用」抗原検査キットと呼びます。
主に医療機関での使用が想定されているため「体外診断用医薬品」に分類されるものもあり、臨床的有効性があると国に認められたものとなります。
体外診断用医薬品とは
病気などの診断を目的に使用される医薬品の中で、人や動物の身体に直接使用されることのない医薬品のこと。
「薬事承認を受けている」ことの最大のメリットは信頼性・安心感が得られることです。
賛否両論あると思いますが、やはり国にきちんと精度が認められていることは最大の信頼と言えます。
研究用の抗原検査キットとの大きな違い
体外診断用医薬品に分類される抗原検査キットは市販されていない。
販売が許可されているのは薬局のみで、そのほか医療機関で取り扱われています。
詳しくは以下の厚生労働省、および消費者庁のホームページをご確認ください。
また、体外診断用医薬品に分類されている抗原検査キットであっても「診断」はできません。
いずれにしても医師により確定診断が必要となるため、医療機関を受診することをオススメします。
【研究用】抗原検査キットの存在意義
国に承認されていないなら、不信感が強いし、信頼性も無い。
存在する意味ってあるの?
体外診断用医薬品に分類されていない研究用の抗原検査キットは精度や信頼性が保証されているものではありません。
しかし、見方によっては一次スクリーニング検査として利用できる可能性はあります。
研究用の抗原検査キットは、商品紹介やパッケージに高い精度が記載されています。
メーカー独自の研究や調査により算出したものと思われます。
研究用であったとしても、もしも「陽性」が出た場合は高い確率で陽性と言われているため、すぐに医療機関を受診することをオススメします。
特にCE認証マークのある製品は、欧州で高い信頼性・安全性が認められています。
CE認証についてはこちらをクリック(タブが開きます)
CE認証とは?
CE認証は、CEマークともいわれすべてのEU加盟国の基準を満たすものに着けられる基準適合マークのことを指します。
CE認証がされている商品は欧州その製品が安全であることを示し、消費者が購入する際の基準の1つされています。
本記事でご紹介する抗原検査キットも5つのうち4つがCE認証されており、高い信頼性・安全性が確保されています。
CEは”Conformité Européenne:ヨーロッパに適合している”というフランス語に起因していると言われています。
海外製の抗原検査キットは、ほとんどが厚生労働省の承認は得られていませんが、上記のように欧州では当たり前のように認められている場合があります。
例えば・・・
発熱や咳などの風邪症状があるとき、研究用の抗原検査キットを使って検査をします。
陰性 ⇒ 症状が続く場合は医療機関を受診
陽性 ⇒ ほぼ確定なので即医療機関を受診
というように、スクリーニング的に検査が行えます。
インターネットなどで抗原検査キットを購入する際は、CEマークがあるかどうかを確認してみてください。
CE認証マークがあっても、個人で「診断」として利用することはできませんのでご注意ください。
重要なのは、研究用であっても「陽性」の場合陽性である(真陽性)可能性が高いという事実です。
よくある質問【Q&A】
- 抗原検査とPCR検査はどちらがいいですか?
-
症状がある場合は抗原検査、無症状の場合はPCR検査が良いです。
- 濃厚接触者になりました。抗原検査キットを使って検査してもいいですか?
-
濃厚接触者であっても、症状がなければほとんど無意味です。
しかし、医療用抗原検査キットを用いて濃厚接触日から2日目、3日目に検査で陰性が出れば濃厚接触者の隔離機関は終わります。(2022年8月時点)
- 息苦しさがあります。医療用抗原検査キットを使って陽性でした。
このまま自宅療養が良いですか? -
息苦しさは呼吸不全症状につながります。
パルスオキシメーターをお持ちであれば測定し、94%以下の場合は医療機関を受診しましょう。
無理をして自宅療養に努める必要はありません。
- 抗原検査キットを自宅で使用しました。そのままゴミ箱に捨てていいですか?
-
ビニール袋などで二重に梱包し、数日経過後に燃えるゴミに捨てると良いです。
自治体のごみ捨てルールをご確認ください。
- スワブが怖くてうまく検査できません。どうしたらいいですか?
-
偽陰性を誘発する可能性があります。
お近くの病院か保健所に問い合わせをしてみてください。医療機関で検査することをオススメします。
あるいは、唾液で検査ができるPCR検査もご検討ください。
- 抗原検査を受けるのにお金はかかりますか?
-
医療機関であれば検査費用はかかりません。(公費)
陽性となった場合、診察料が発生する可能性があるので注意してください。
- 抗原検査で陰性証明書の発行はできますか?
-
医療用の抗原検査であれば、医療機関によっては出来る場所もあるかもしれません。
問い合わせてみてください。
研究用の抗原検査キットでは(結果を持参しても)できません。
- 海外渡航を予定しています。
病院で抗原検査をしたところ、陰性でした。
証明書を発行し、渡航できますか? -
2022年6月1日現在、抗原検査(定性)での検査証明は不可とされています。
厚生労働省の検査証明書についてのページを参照してください。
また、検査証明書が必要な場合はあらかじめ検査をうける医療機関にその旨をお伝えください。
- 自宅で『研究用』抗原検査キットを使って陽性の反応がでました。どうすればいいですか?
-
速やかに医療機関を受診してください。(以下の記事も参考にどうぞ。)
- 自宅で『医療用』抗原検査キットを使って陽性の反応がでました。どうすればいいですか?
-
お住いの自治体HPを確認して、陽性登録が可能なら行ってください。
感染拡大防止のため外出は控えましょう。
呼吸状態が悪い(SpO2が94%以下)、持病がある方は医療機関や保健所にご相談ください。
まとめ
抗原検査についてのまとめです。
- 抗原検査は陽性・陰性の判定を行うスクリーニング検査
- 無症状の場合は意味がない
- 検査時間が早い(15分~30分)
- 唾液または鼻咽頭ぬぐい液による検査
- 発症後2日~9日なら検査精度はPCR検査と同等
- 研究用は市販されているが推奨されていない
- 医療用は薬局でしか手に入らないが推奨されている
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