「放射線(レントゲン)検査って、こわくないの?」
就職している人はほとんどが胸部のX線検査を受けたことがあると思います。
放射線や、X線検査と聞くと頭に浮かぶのは”被ばく”の文字です。
放射線は目に見えません。
しかし、正しく扱うことで私たちの健康維持、あるいは病気の早期発見の手助けをすることができます。
私も、勉強するまでは放射線は目に見えるわけではないし、よくわかりませんでした。
本記事では、一般的な”レントゲン検査(放射線検査)”について、どの程度の被ばくをしているのか、またそれが安全なのかどうか、など現役の放射線技師がわかりやすく解説します。
- 病院行う一般的な放射線検査の被ばく
- 子どもが受けるレントゲン検査について
- 被ばくとはどんなものなのか
放射線(レントゲン)検査とは
基本的な考えとして、放射線は人体にとっては有害な電磁波の一種です。
しかし、有害となるのは放射線を「使いすぎた場合」であり私たちの身近な検査での放射線の使用はほんの少しです。
ではなぜ、放射線検査を行うのでしょうか。
放射線検査は、正しく行うことでみなさん(患者さん)へ多くの利益をもたらします。
放射線による体への影響と検査による患者さんが得られるメリットを天秤にかけ、メリットの方が大きい場合、医師は放射線検査の指示を出します。
一般的な放射線検査(健診のレントゲンなど)はリスクはほとんどなくメリットがとても大きいとされており、多くの病院でレントゲンの検査が行われています。
基本的な放射線(レントゲン)検査
本記事では、みなさんが受ける可能性の高い放射線検査についてピックアップしてお伝えできればと思います。
一般的によく行われるレントゲン検査は、以下のようなものがあります。
- 胸部X線検査
- 腹部X線検査
- 整形外科領域(手や足)のX線検査
それぞれについて以下の項目を説明します。
- 検査の概要
- 検査でわかること
- 被ばくの量(こわくないかどうか)
胸部レントゲン(X線)検査とは
胸部のX線検査は最も行われているX線検査かもしれません。
咳や息苦しさのあるときに病院を受診すると、高確率で胸部のX線検査を行います。
また、雇い入れ時など”健康診断”にて胸部のX線検査は実施されます。
レントゲンたくさん撮ると怖いんだろ?
胸部のレントゲン検査をはじめ、一般的なレントゲン検査は全くこわくありません。
しっかり説明していきますね。
胸部レントゲン検査でわかること
放射線検査の代表ともいえる胸部のX線(レントゲン)検査。
文字通り、胸部の疾患がないかどうかをチェックします。
胸部と言っても具体的に言ってくれないとわからないなぁ
胸部には以下のような臓器があります。
- 肺・肺血管
- 心臓
- 胸部大動脈
- 気管支
- 横隔膜
- 食道
- 乳房
- 肋骨・鎖骨・肩甲骨・脊椎
主な臓器を見てもこれだけのものがあります。
肺炎をはじめ、肺がんのもとになるような小さな影、心臓が肥大していないかなど胸部1枚の写真でたくさんのことがわかります。
胸部レントゲン(X線)検査の被ばく量
次に、気になるのは胸部のレントゲン検査でどれぐらいの被ばく量があるのか、ということですよね。
あまり気にしない人も多いと思いますが、放射線は一般的に体に害のある光ですので、知っておいて損はないでしょう。
この数値はX線検査の中でも極めて小さい数値です。
私たちは、普段生活している中でも被ばくをしています。
宇宙からの宇宙線、食物や大地からの自然放射線など生活のあちこちに放射線は潜んでいます。
目に見えないので難しく考えてしまうかもしれませんが、私たちのとても身近に被ばくというのは存在します。
ですが、健康状態には全く影響がないと考えてよいですので、安心していただければと思います。
腹部レントゲン(X線)検査
胸部よりずいぶん頻度は減りますが、腹痛や嘔吐の場合はほぼ確実に腹部X線検査を行います。
私の働いている病院は、小児科があります。
小さいお子さんや乳児ちゃんの便秘などがあった場合、おなかのレントゲンを撮ることがあります。
腹部レントゲン(X線)検査でわかること
腹部のレントゲン検査は、おなか全体の臓器、小腸や大腸のガス、便秘の人は便の状態などを画像として映し出します。
腹部にも、さまざまな臓器があります。
- 胃
- 肝臓
- 腎臓
- 膵臓
- 小腸
- 大腸(上行結腸~直腸)
- 膀胱
- 骨盤
腹部のレントゲン検査では、主に胃~小腸・大腸内のガスや便を見ることが多いです。
肝臓や腎臓は形はなんとなくわかりますが、その状態まではわかりにくいです。
膵臓に至っては腹部のX線検査では全く見えません。
肝臓や腎臓、膵臓などの臓器はX線CT検査や、MRI検査、エコー検査で検査をすることがほとんどです。
腹部のX線検査では、便秘や腸閉塞、消化管穿孔などの疾患がわかります。
腹部レントゲン(X線)検査の被ばく量
子どもさんや赤ちゃん(新生児・乳児)など、小さい子のおなかのレントゲン検査を撮る時、やはり親御さんは被ばくについて心配されます。
おなかの写真の中に、生殖器が含まれるからです。
”生殖器に放射線は良くない”
というのはなんとな~く一般の人にも浸透しています。
私も小さい子のお母さんやお父さんに被ばくは大丈夫か?
と尋ねられることも多々ありました。
胸部X線検査と比べると、被ばく線量は高くなっています。
胸部と比べて、腹部は体厚が大きいからです。
体の厚みがあり、中身も詰まっているため胸部より多く放射線を当てる必要があります。
しかし、健康被害などは全くありませんので安心してくださいね。
子どもの放射線被ばくについてはのちほど説明します。
簡単に言うと、子どもは体が小さいのでその分必要な放射線量も少なくなります。
子どもの成長や健康への影響も全くありません。
整形外科領域のレントゲン(X線)検査
胸部、腹部に続いて多いのが、整形外科領域のX線検査です。
例えば・・
- 足をくじいた⇒足関節のX線検査
- 尻もちをついた⇒腰椎のX線検査
- 手を挟んだ⇒手関節、指骨のX線検査
スポーツをやっている人や、力仕事をしている方はなんらかの怪我をする場面も多いのではないでしょうか。
整形外科領域のレントゲン(X線)検査でわかること
整形外科領域では、主に骨を見ます。
場合によっては、撮影時に負荷をかけることによりじん帯や腱についても診断することができます。
- 骨
- じん帯・腱
- 椎間板
- 関節
- 軟部組織
一般的には、骨折の診断やじん帯損傷の程度などの鑑別に役立ちます。
整形外科領域の被ばく線量
私の勤める病院の整形外科の先生は、主に骨やじん帯を中心にレントゲンの指示を出します。
整形外科では、手足の指や関節、脊椎などを検査します。
手や足の指、腕などの部位は厚さがそれほどありません。
そのため、必要な放射線量も低く検査を行うことができます。
一方で、腰椎(腰の大きな骨)や、骨盤はその周りをたくさんの臓器や筋肉で覆われていますので必要な放射線量は少し多くなります。
整形外科領域の検査についても、成人と比べて子どもの場合はそれぞれの部位が小さいので、検査に必要な放射線量も少ない量で検査することができます。
子どもの放射線(レントゲン)検査は安全?
大人が放射線検査を受けるときはそこまで被ばくについて考えない方が多いと思います。
しかし、子どもの検査となると成長への影響や、何か病気になってしまうのではないかと不安になる気持ちが少なからずあると思います。
私たち放射線技師は、できるだけ少ない被ばくで済むように工夫しながら検査を行っています。
放射線検査や被ばくに関してわからないことや、不安なことがあれば、放射線技師にお気軽にお尋ねください。
安全です!と言われたとしても、なぜ安全なのかちゃんと知っておきたいですよね。
目に見えない検査なので、こわいと感じてしまうことは誰でもあり得ます。
子どもの放射線防護(ぼうご)
子どもは大人よりも放射線の感受性(影響の受けやすさ)が高いという研究結果が出ています。
病院やクリニックなどで放射線の検査を行う際には、医師や放射線技師によって可能な限り受ける放射線の量を軽減しています。
放射線検査を行う際、少し重たいエプロンなどを着用・使用する場合がありますが、これも放射線防護の一つです。
放射線の影響を受けやすい臓器(生殖器や甲状腺、水晶体など)を散乱線から守るために使用します。
エプロンを撮影の際に使用することで、余計な被ばくを受けずにすみます。
特に子どもさんの放射線検査の際は、医師や技師さんが余計な部位への防護をちゃんとしているかを気にすると良いですよ。
一般的な病院やクリニックなどで行われるレントゲンの検査では、生殖腺(精巣や卵巣)に対して防護をすることが多いです。
今後、レントゲンの検査を受ける機会があれば少し気にかけてみてくださいね。
まとめ
みなさんが普段受けている放射線を使った検査は、基本的には健康への影響はありません。
私たち医療従事者は、レントゲン検査のことを”一般撮影検査”と呼んでいます。
健康診断での胸のレントゲン検査は、”胸部一般撮影”といいます。
このように、放射線を使った検査はとても多く種類があります。それに伴う被ばくの仕方や被ばく線量の程度もさまざまです。
本記事でご紹介した胸部・腹部・整形領域のX線検査は放射線検査の本当にごく一部にすぎません。
当ブログでも少しずつご紹介・解説し、皆さんが放射線に対して少しでも安心していただけるよう努力していきます。
コメント