診療放射線技師を目指して勉強しています。
診療放射線技師は、放射線を扱うので当然被ばくもしますよね?
その影響でがんになったり寿命が縮んでしまうと友達が言っていました。
これは本当ですか?
この疑問に答えていきます。
診療放射線技師(以下放射線技師)は少し特殊な職業で、人体に有害な「放射線」を扱う職業です。
大学病院をはじめクリニックや歯科でも働いています。
結論から申し上げます。
結論
このことについてなぜそう言い切れるのか、本当に安全な職業なのか解説します。
本記事では以下のことについて解説していきます。
- 放射線技師が危険・早死にすると言われる理由
- 放射線技師が安全な職業である理由
- 身近な被ばくについて
この記事を読めば、放射線技師が安全な職業であることと、実は身近にも被ばくがあることについて学べます。
放射線技師が危険・早死にすると言われている理由
放射線技師について調べていると、以下のようなことに遭遇します。
- 放射線を使うからがんになりやすい
- 子どもにも被ばくの影響がでるのでは?
「放射線」ってなんですか?
・・・と言われても一般人にはなかなか説明が難しいと思います。
チェルノブイリ原発事故をはじめ、福島第一原発事故のこともあり「放射線」や「放射能」について人々は良い印象を持ちません。
私たちの身近においても、レントゲン検査やCT検査、放射線治療など、主に病院で放射線を使われることがあります。
患者サイドから考えると1回の胸部X線撮影(レントゲン撮影)かもしれませんが、担当する放射線技師はそれを何十回、何百回と繰り返しています。
そのため、一般の人よりも明らかに放射線に触れる機会、すなわち被ばくをしてしまう機会が多いのは確かです。
被ばくをたくさんしてしまうイメージから
「放射線技師はがんになりやすい」
「病気になりやすい」
などと言われてしまっている現状があります。
これが放射線技師が「早死にする」「寿命が短い」「危険」などと言われている理由です。
放射線技師が安全な職業である理由
では、放射線技師や医師に放射線技師が早死にするかどうかを聞いてみましょう。
答えはすべて「早死になどしない」です。
なぜなら、放射線に対する正しい知識を持っているからです。
放射線に関する情報はネットにごろごろと転がっていますが、わざわざ検索してまで調べようとする人は多くありません。
では、何をもって医師や放射線技師は「早死にしない」「安全な職業だ」としているのでしょうか。
答えは以下のことについて理解すればたどり着けます。
- 放射線技師が受ける被ばく
- 確定的影響と確率的影響
①放射線技師が受ける被ばく
放射線技師は、血管造影検査をはじめ、放射線治療などさまざまな放射線検査に携わっています。
放射線技師が業務中に受ける被ばくのことを「職業被ばく」と言います。
医師や放射線技師などの放射線業務従事者は放射線技師などにより「線量管理」が行われています。
定められた数値以上の被ばくはしないようにということです。
下の画像は、実際に私が管理している放射線業務従事者の線量管理票です。
赤枠が私のデータです。
4月1日~4月30日の1か月の間に水晶体・皮膚(プロテクターの外)の等価線量として0.2mSvの被ばくがあったことがフィルムバッジにより測定されていました。
放射線検査の際に患者さんを介助しながら撮影したり、位置合わせをしながら撮影することがあるので微量ながら検出されています。
日本医学物理学会の放射線防護委員会ホームページに、職種別の個人実行線量(/年)が掲載されてますので下記に引用します。
全国の放射線技師は、1年間に下記の職業被ばくを受けています。
- 実効線量(プロテクター内):0.77mSv
- 水晶体等価線量:1.26mSv
- 皮膚等価線量:1.44mSv
水晶体と皮膚に関しては、プロテクター外のフィルムバッジをもとに算出されています。
では、これらの数値が「安全であるかどうか」について説明します。
②確定的影響と確率的影響
放射線の人体への影響について説明するときに避けては通れないのが確定的影響と確率的影響です。
以下、定義を示します。
脱毛や白内障、皮膚障害などの症状が現れる影響のことを指します。
確定的影響には「しきい線量」が存在し、しきい線量を超えると影響の発生率がグンと上がります。
しきい線量:同じ線量を多数の人が被ばくしたとき、全体の1%の人に症状が現れる線量のこと。
(ICRP2007年勧告)
環境省によると、一度に100mGy以上の放射線を受けた場合、確定的影響が現れてくることがあるようです。
以上のことをふまえ、①で示した放射線技師の被ばく線量について考えてみましょう。
- 実効線量(プロテクター内):0.77mSv
- 水晶体等価線量:1.26mSv
- 皮膚等価線量:1.44mSv
1年間で上記の数値を平均的に受けているということなので、確定的影響については考える必要はなく、確率的影響に関しても検出不能とされる100mSv~200mSvを大きく下回っているため、放射線技師に何か健康被害が起こることは限りなく低いと推定されます。
限りなく低いですが、あくまでも「確率的」なので0とは言い切れません。
このように、放射線技師の受ける被ばく(職業被ばく)はとても低い数値で、健康への影響は無いと言っても良いでしょう。
ただし、放射線に関してきちんと勉強し、取り扱いを学んできたからこそ放射線防護に気を付けて業務をこなしているからこそ放射線を取り扱うリスクについて限りなく低減することができていると言えます。
身近な放射線について
放射線技師が安全な職業であることはわかりましたね。
ここからは、私たちの身近にある放射線について知っておいてほしいことを紹介します。
日常生活を送る中で、実はすぐ近くに放射線を浴びていることを知っていますか?
- 宇宙からの放射線
- 空気中の放射線
- 食べ物に含まれる放射線
- 大地からの放射線
宇宙線
宇宙には放射線が多数存在し、地球に住む人々にも宇宙線として放射線を浴びています。
年間線量は0.3mSvです。
空気中の放射線
私たちの吸っている空気の中にも「ラドン」と呼ばれる放射性物質がわずかに含まれています。
年間線量は0.48mSvです。
食べ物に含まれる放射線
ごはん、おかずなどさまざまな食品にもごく微量に含まれています。
年間線量は0.99mSvです。
大地からの放射線
実は地面からも放射線が発生しています。
年間線量は0.33mSvです。
自然放射線
身近に潜む自然から受けている放射線を総称して「自然放射線」と言います。
世界年間平均で2.4mSv、日本の年間平均で2.1mSv受けています。
いずれも、健康への影響はありませんが知識として知っておくべきものです。
以上のことを知っておくことで、放射線に対して過度に怖がる必要はないですね。
まとめ
結論
放射線技師は、放射線を取り扱う影響で早死にすることはない。
加えて、職業としてもリスクは低く安全な医療技術職の1つである。
身近な人に放射線技師のいる方は、安心できたのではないでしょうか。
基本的に何も心配することはありません。
よくある質問
放射線技師や被ばくに関してよくある質問をまとめましたので参考にしてみてください。
- 放射線技師を目指していますが、被ばくが心配です。
-
放射線防護が守られていれば被ばくはほとんどありません。安心してください。
- 女学生です。放射線技師を目指してますが妊娠中の放射線業務が心配です。
-
妊娠中であっても、通常の業務で胎児が被ばくすることはありません。
被ばくの可能性の高いDSAや核医学検査は避けましょう。
- 自然放射線を浴びてると聞いて不安です。どうすればいいですか?
-
自然放射線による健康被害は何もありません。気にせず生活してください。
- 月に2回も胸部レントゲン検査を受けました。被ばくでがんになりませんか?
-
なりません。胸部撮影1回の被ばく線量は約0.06mSvです。
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